芝居を手にした黄兎の日々

芝居を再び手にした私が繰り広げる、やや外れた日々。
でも、きっと面白い日々に違いない。
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【舞台】芸術家入門の件





2019年5月25日(土)13:00の回
上手最前列より観劇
at 吉祥寺シアター



この日に東京に行く予定になったので、何を観ようかな〜
と思って色々検索。最近、東京に行く日と観たい劇団が
かみ合わなかったのですが、今回は気になる劇団が3つ...。
これは嬉しい悲鳴!


そんな三つ巴を制したのがブルドッキングヘッドロックさん。
理由としては
・事前予約からの当日精算が可能
(振込とか手数料がかかるのが嫌だし面倒。クレカを使いたくない)
(遠方からなので、急な不幸とかあった時にキャンセルができないと
 非常に憂鬱。地方住みなのに、行けなくなったチケットを誰が
 買ってくれるというんだい?なので、当日精算はとてもありがたい)
・時間が13:00で丁度よい
・東京駅着なので、交通の便がよい
・名前は知っているけど観たことがなくて、是非観たい
・喜安さんの台本に信頼がある(=「風強」「幕が上がる」大好き)
・うらじさんと佐野さんが出ているから役者さんも上手いし
 作品も外れがなさそう
・吉祥寺シアター1回行ってみたかった
・吉祥寺のカフェとか行ってみたい


デメリットとしては、おしゃれな街吉祥寺に来ていく服が無い、
くらいですね。(田舎特有の発想)


全公演が終了しているのでネタバレとか勝手な考察とかありで
書く予定です。それでもいいよという方は「続きを読む」から
どうぞ。


■開演前演出が絶対的に好き


劇場に入って目にしたのが、開場時から動いている役者さんたち。
あぁ〜〜これ!この演出だぁ〜!
これは役者さんたちが全員ムラなくできる人たちが集まっている
やつだぁ〜〜〜、と見て思いました。


吉祥寺シアターはかなり天井の高さがあって、この抜け感が
とてもいいです。この高さが必要なお芝居って絶対あるよね、
と思っています。そして、他にも候補はあったかもしれないですが、
この劇場にしたのは、この作品にこの高さが必要だったんだな、
というのが観ている内にわかってきます。


舞台中央に明らかに「何か」が組まれていくであろう支柱。
その両側に組まれた、キャスター付きの大きな鉄骨屋台。(高い)
うん、これは動くな。動く。
こういう予感が沢山詰まっている開演前の舞台。


もちろん役者さんが既に舞台上で動いています。
そして、それぞれが作業をしている。
上手、上奥、下手、中央奥、下手奥。
最前列だったので、目の前で作業をしている役者さんに目が
いってしまいますが、これは全体を観たかったなぁと思いました。


ちなみに私はこういう、開演前から動いている演出が好きです。
アマヤドリの「ロクな死に方」も池袋で見た時は動いていました。
それもあって、今回は期待値がぐーんと上がりました。




■キャスト表を見て気合が入る


私は開場してすぐ入ることが多いので、客席で折込チラシの束を
見ることがほとんどです。ホテルに帰って、好きなチラシだけ
持って帰ります。
ですが、今回は開演前の舞台演出もあったのと、キャスト表を見て、
この時間をチラシチェックに使うのは勿体ないと思い、キャスト表だけ
チラッとみて、そのまま終わりにしました。


そのキャスト表。
分かれているんです。
「芸術家の世界」
「大学生」
「古代ギリシャ」
「作る者」


あぁ〜〜〜〜、この時点であぁ〜〜〜〜ですよ。
これはぼんやり見ていてはダメな種類のやつで、自分の頭の中で
組み立てたりしないと駄目なやつだぁ〜〜〜と思いました。
それもあって、チラシを見ている場合じゃねぇ!(笑)
ということで、舞台をじっと見ていました。


ここでのポイントは、「役者と役名を一致させようとしない」という
ことです。っていうか、そこはいつも大体諦めることにしています。
最初に出会う人なんて、名前を知らないまま会話することも多いし、
関わっていくうちに知っていくというのが常だと思うからです。
だから、役名も役者も覚えないで観ます。
(元々存じ上げている、佐野大樹さんや喜安さんやうらじぬのさんは
 別として)
最終的に何となく区別がつくような気がしています。


そんなわけで、ストーリーも役名も役者もほぼ初見という状態で
見ていくのですが、私はこういう頭を使いながら、組み立てながら
見る作品が大好きです。わかりやすいストーリーモノも好きですが、
見た後に何時間でも考察できるような作品が好きです。
だから、今回は相当引きが良かったなぁ〜と思いました。




■海外古典が下地にあるかないか


話が進んでいって、大学生パートで、吉橋(小林義典)が演劇サークルに
誘われて、お芝居の練習を始めます。この時に出てくる作品が
オイディプス王」なのですね。
この時点で、「あぁ〜〜〜、これはこの作品が効果的に使われるのでは
ないだろうか〜〜〜」という予感が。
(あらすじは https://book-styles.jp/society-worldhistory-3
こちらがわかりやすいと思います。)


もちろん知識が無くても何となくはわかるのですが、抜粋された
台詞や意図のある台詞のかぶせ方は、元の物語を知っていた方が
よりわかったなぁと思いました。勉強不足。
(帰りの新幹線の中であらすじとか元のギリシャ神話とか読みました)


これが、「芸術家の世界」「大学生」のパートで劇中の台詞と
役の台詞を混合するシーンがあるんですけど、ここが半端なく
緊張感が上がります。確実にこのオイディプスの台詞がこのキャラの
今なり、心情なりを刺しているというのがわかるし、そういうことか、
と、わからないなりに納得させられるところもありました。
このシーン、いいですよね。今見たらもうちょっとわかるかもしれない。


こういう、海外古典とか神話とか、そういうのもあるけれど、
ある程度の教養や常識があって面白いと感じることもあると思うの
ですよね。だから、何一つお芝居を観る、演じるにしても無駄な
ことなんて無いんだって思います。全部が演劇に繋がっているって
わかるのは幸せです。


この演劇の稽古をするシーンで、木戸(喜安さん)が演出として
見ているシーンがあるんですけど、ここの木戸がめっちゃ演出家で、
これは木戸としての迫力もあるけれど、喜安さんの演出家としての
迫力も合わさってるんじゃないかなって思って見ていました(笑)
その後のメタ発言で、「出演しながら役者のお芝居をチェックして〜」
みたいなところがあったと思うんですけど、めっちゃ面白かったです。


そうそう、こういうメタ的なところもあったんですけど、
こういうのをやられると、お芝居と現実の境界線が曖昧になって
来ると思うんですよね。お芝居を観ていたはずなのに、急に
見ている現実の私もそこへ引っ張られる。そうすることで、
特にこの作品は、自分もこの世界の「芸術家」という価値観上に
強引に、あるいは無意識に乗せられているんじゃないかって
思いました。




■自称と第三者からの評価が一致しない面白さと苦悩


自己評価と周りの評価が一致しなくて苦悩する、というのは
芸術家の分野以外でも起こることです。
現に職場では「これができる人だろう」という評価の元
役職を割り振られているわけですが、本人は「そうではない」
という意識の人が多く、その差をまず埋めるところから
始まります。
そういう意味ではとても身近な問題だし、価値観だなと
思って、すんなり入ることができました。


芸術家として居続けるためにどうしなければならないか、
という芸術家自身の苦悩と、外側を塗り固められ、それを見て
芸術家先生とあがめるスポンサーの構図は見ていて辛すぎず、
軽すぎず。この作品の中心となる「芸術家の世界」をフラットに
構築しているような感じがしました。


逆に、リアリティよりの空気の作り方やシーンが詰め込まれた
「大学生」のところは、さりげない日常なのに抉られる、
という私の大好きな感じでとても面白かったです。


世界のパートによって、ちょっとずつお芝居の感じ(リアル寄りか
デフォルメ寄りか、みたいな)が多分演出?として
分けているような感じがして、細かいけれどこれがあるから
無意識でもどの世界なのか混乱せずに見られるのかな?と
思いました。




■大学生パートが死ぬほど全員上手い


死ぬほど全員上手かったです。
好きな所とかをできるだけメモしておく。


・1年生のデッサンの講評のシーンが好き。
・桜井(永井さん)が真島(有馬さん)だったかな...の
 デッサンをサッと見て、じっくり見て、その次の瞬間
 「あ、これ無理、ありえない、なにこれ」みたいな、
 ちょっと歪んだ表情をしたのがとても好き。
・同じシーンで正論を言い合うところが「うわっ」って
 思った。(いい意味で)
・生田(はしさん)が芸術家の方面行きなよ、みたいに
 言って、言い合いみたいになって気まずい空気が
 流れた後に入ってきた水堂(葛堂さん)?が来た時の
 「え?マジこのタイミングでなんかきてうわっ...」
 みたいな空気がとても好きだった。
・吉橋(小林さん)の、オイディプスの台詞を言っている
 時の、手を胸の前で回すのが好き。(何やっても
 面白いからずるいと思った。)
・田淵(佐野さん)の実力で行けそうだったのに別の
 ことで不備があっていい話が微妙になるという下りが
 胸が苦しくなるけどどこかで「そうだよ」と思っている
 自分が居て面白かった。
・曽我(篠原さん)さんって本当!!本当ッツ!!
 めっちゃ辛くない?もう、辛くて辛くて、観ている方は
 辛くて顔が歪んでいるくらいなのに、見た目何ともない
 感じで演じているのに内心が「わかる」ってなるのが
 とても好き。
・小野寺(寺井さん)みたいな人ってどこにでもいるよね。
 どこにでもいる故に共感できる人が多そう。
 どこにでもいるし皆この感じ解るのに、どうも憎めない
 感じになっているのが凄いなと思った。
・笠(小笠原さん)ってわかるわ〜〜〜〜。わかる。
 ああいう人も一人くらいいるし、自分の周りにも多分いた。


この「大学生」のパートは、本当にこ芸術系の大学にこういう
人いるわ...なんなら、一般の大学だったけど、こういう感じの
空気とかやりとりとかそういうのに満たされていたわ...っていう
気持ちがずっとありました。「大学生」パートが一番好き。


パンフレット買えよ、という気もしますが、買わなかったので、
役と役者さんが一致していないところがあったらすみません。
webで検索しながらお写真を拝見して確認しながら書きました。
せめて過去の公演のように、写真ありでキャスト表をwebに
終わってから良いので載せていただけると細かい感想が
書きやすいです。




■「芸術家」という枠内に片足を突っ込んでいるかわかる


芸術という枠組みだけではないけれど、
「プロとして名乗ってもいいのか」
という問題はどこの職種でもあるんだろうと思っています。
芸術という分野が曖昧なだけで、その境界線を引きにくいから
問題に挙がりやすいのだと思います。


自分の職業、製造業であっても「プロ」という意識で
仕事をしている人がどれだけいることか。
社員であってもパートであってもプロと名乗れるのに
そういう意識はない人がほとんどです。
そう思えば、芸術家は境界線が曖昧だから、
自分自身で意識しないと立っていられないちおうこと
なのかもしれないし、自分の職業に対して意識が強い、
強い思いがあるということなのかもしれません。


大学生のパートで、「食べていけるか」「職業にできるか」
という物差しで芸術家という職業に固定するというのは
とても共感出来て、プロを目指さなくなった今の私でも
苦しくなるほどのシーンでした。


自分の才能と運とどこで見切りをつけるかというのは芸術系の学生に
限らず出くわすところだと思います。それこそ役者もそうだし、
人脈(=運)というところで仕事をもらえたりそうでなかったり
という所にどれだけ今まで気持ちが揺らがされたか...。
世渡りのうまさや教授との関係性とか芸術以外のところで差がついて、
芸術でない部分が上手くいくことによって芸術家になりうるという矛盾。
それに揺さぶられるのもとてもわかります。


プロを諦めたけれど、この作品を観て自分がこの輪の外に居る
という感覚はなかったです。まだ、本当に外側だけれど、
バームクーヘンでというと外側〜5枚目の間くらいの感覚には
いるんだなと思いました。それが自分の諦めの悪さであり、
まだここに居られてよかったと思う所でした。
このお芝居を観た意義は多分ここにあったんだなと思います。




■時代によって価値が違う面白さ


それぞれの世界を描きながら、そこにある<芸術>の価値や
評価のされ方が違う点も面白いなぁと思いました。


元々芸術家なんてものはなかったというのは忘れがちで。
祭事であったり、権力の象徴であったり、墓であったり。
そういうところから出発しているというのを日常では
抜け落ちているなぁと、古代のパートで敵の的になった像を
みたときに思いました。また、そうやって目に付くものに
なった瞬間に、善意だったり悪意だったりするものの
標的に芸術に限らずなるんだなというのも思いました。


元々価値がなかったものに、後付けで、周りの声で
価値をつけていく。一人では芸術は成り立たず、
周りに誰かが居て、それを見て、評価なり批評なりを
することで価値が生まれる。なんでも見て貰わずには
価値が生まれない。そういう意味では、大学生たちが
自分の才能を信じて製作を行っている内は価値が無く、
それを勇気をもって誰かに見て貰うなり批評してもらう
なりして初めて価値が生まれるんだなというのは
自然だけど、一歩踏み出した残酷さがあるなと思いました。



■オイディプス王の戯曲や古代ギリシャの神話を繋げるなら

オイディプス王の作品や神話が作品に絡んでいるなら、
隠された真実みたいなものがあっても面白いかもしれない
と思いました。

本当は実の子であるのに、それを隠されて占い師の言う
結末に向かっていってしまう...。

本当は才能が無いのに祭り上げられるという構造は
これに沿っているのかなぁと思いました。
才能があるけれど、自分には才能がないと思い込んで
しまう、という可能性もあるかもしれません。

また、本当に盗作した作品は盗作だったのか、という
風に考えるのも面白いのかもと思いました。
盗作した作品が実は自分が昔製作したもので、それを
自分が盗作した相手がインスピレーションを得て
作ったものかもしれない。そうであれば、本当に才能が
あったのは誰だったのか、という話になるかもしれません。
盗作した相手が明言されてはいなかったけれど、
大学生のパートと実はリンクしていた、ということになれば
演じたそのまま、曽我さんを真島が盗作した、になるかも
しれないし、それ以外の悩んでいた学生かもしれない。
色々な可能性が埋まっているのは面白かったし、
その埋もれているというのも芸術っぽいなと思いました。


1回見ただけでは本当に細かい部分まで見られなかったし、
あと何度か見返したい...!と思いました。
最前列でみましたが、これは中央と後方からみたのでは
また違うな〜と思いました。
最後のオブジェは本当に力強いと思いました。


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